中山身語正宗

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令和元年6月

第2部 さまざまな菩薩 

⑧普賢菩薩

 普賢菩薩は、文殊菩薩と並び、釈迦三尊を形成しますが、文殊の智慧に対して、普賢は慈悲を司り、諸菩薩の上位に位置づけられます。普賢は、「サマンタバドラ」という原語(完全なる幸福・吉祥などの意)に由来し、仏の理性(慈悲の究極)を意味するとされます。堅固な菩提心を持ち、女人往生を説くために、多くの女性の信仰も集めました。

 『華厳経』「普賢行願品」では、①礼敬諸仏(諸仏を敬う)、②称讃如来(如来を讃える)、③広修供養(広く供養を修める)、④懺悔業障(業障を懺悔する)、⑤随喜功徳(功徳を随喜する)、⑥請転法輪(転法輪を請う)、⑦請仏住世(仏の住世を請う)、⑧常随仏学(常に仏に従って学ぶ)、⑨恒順衆生(常に衆生に従う)、⑩普皆廻向(あまねく皆を廻向する)という十の広大な誓願(十大願)を発し、しかも「すべてが尽きてもこの願いは尽きない」という大きな誓いを立てたとして、普賢菩薩を称讃しています。また同じく「入法界品」では、善財童子が文殊菩薩の教えに従って五十三人の善知識を歴参し、最後に普賢菩薩の十大願を聞いて、西方極楽浄土への往生を願った物語が説かれます。

 なお『法華経』「普賢菩薩勧発品」では、『法華経』を常に読誦する行者(持経者)の前に、普賢菩薩が白象に乗って現われて守護することが説かれ、平安時代ごろから『法華経』の信仰が広まるとともに、造像もさかんになっていったようです。普賢菩薩の眷属には、天女のような十羅刹女(じゅうらせつにょ)がいて、同じく持経者を守護することが知られています。

 密教では、菩提心を司る尊格として金剛薩埵と同体とされ、重要な役割を果たします。金剛薩埵(ヴァジュラ・サットヴァ)は、大日如来の教えを衆生に伝授する第二祖としての役割を持つだけでなく、一切衆生が菩提心を起こすきっかけをつくる菩薩ともされ、大日如来の母たる存在として信仰されます。右手に金剛杵、左手に金剛鈴を持つ姿に表される場合が多いのですが、左手で拳を作り、右手は胸の前にあげて三鈷杵を持つ姿もあるようです。

 中国では四川省の峨眉(がび)山が普賢菩薩の霊場として有名です。普賢菩薩の像は、合掌して六本の牙を持つ白象上の蓮華座に結跏趺坐する姿が多く、蓮華や経典を持つ場合もあります。六本の牙は、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六波羅蜜を表し、普賢菩薩の大いなる行願の根本に菩薩行の実践があることが象徴されています。

 さらに普賢菩薩の延命の徳を密教的展開の中で発展させ、息災延命を修める普賢延命法の本尊として、普賢延命菩薩が祀られる場合があり、右手に金剛杵、左手に金剛鈴を持ち、鼻に独鈷杵を巻く1身3頭6牙の白象に乗る二臂像の他に、4頭の白象上の蓮台に坐す二十臂像もあります。(棟高)

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