中山身語正宗

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平成30年9月

第1部 菩薩の道 

⑨六波羅蜜と六種供養

 これまで六波羅蜜の各々について、少し詳しく見てきました。

 仏様への供養を表す修法に、六種供養というものがあります。そして、この六種供養は、菩薩の修行である六波羅蜜を象徴しているとされています。

 六種とは、閼伽(あか)、塗香(ずこう)、華鬘(けまん)、焼香(しょうこう)、飲食(おんじき)、灯明(とうみょう)の六つで、これを本尊や諸尊に供養するのです。そして、この六種供養と六波羅蜜は、各々以下のように対応しています。

 ①閼伽:布施波羅蜜……水は万物を潤し、布施の徳を表します。
 ②塗香:持戒波羅蜜……香を手のひらに塗って、体を清浄にします。
 ③華鬘:忍辱波羅蜜……花の柔らかな香気で、忍辱の徳を表します。
 ④焼香:精進波羅蜜……火は燃え出すと休まず、精進の徳を表します。
 ⑤飲食:禅定波羅蜜……食物は禅定する体を養う徳を表します。
 ⑥灯明:智慧波羅蜜……明かりは無明の闇を照らす智慧の徳を表します。

 大壇の前方に六器といわれる真鍮(しんちゅう)製の容器があります。焼香器である火舎(かしゃ)を中央にして、その左右に三個ずつ、閼伽、塗香、華鬘が対照的に置かれています。火舎を中央に置くのは、精進は六波羅蜜のどれにも通用するからです。

 お香を焼いて仏前に供えるのは、その功徳を一切処に周遍(しゅうへん)せしむる(遍至法界)という意味があり、これによって修法者は如来無碍智(にょらいむげち)を獲得し、一切の煩悩を断じて速やかに無上菩提を証することができると説かれています。

 なお、インドでは、客を招待したら必ず洗足のための水を出し、また供養の後には口をすすぐ水を出す習慣がありました。この水は閼伽井(あかい)といわれる井戸から汲むため、閼伽水または閼伽香水と呼ばれました。閼伽を仏様に供養することは、修法者の一切の煩悩罪垢(ざいく)を洗うという意味がこめられています。

 塗香は修法者の持戒を象徴し、身心を清浄にする意味があります。

 華鬘は花を糸でつないで組んだインドの装飾品で、花飾りを供養する功徳によって自身を美しくする意味があります。花は踏まれても薫香(くんこう)を残すことから、忍辱の美徳を表します。

 線香は、いったん火が付くと最後まで燃え尽きることから精進の徳を表します。飲食は人の身心を養いますが、同じように禅定もまた身心を養う力があることから、飲食物の供養が禅定を象徴すると考えました。これは施餓鬼供養にも通じます。

 灯明は、暗闇を照らし、安心感を与えてくれることから、仏の智慧を表すとされます。

 如来の舟形光背は、如来の智慧の光の表れであり、また生死の苦海を渡す如来の慈悲のはたらきを象徴しています(以上、今井幹雄『密教法具に学ぶ』東方出版、2005年参照)。

 また、この供養の仕方が、在家の仏壇に応用されると、亡者のための供養となります。

 ①水やお茶湯を供える…布施、②手を香で浄める…持戒、③お花を供える…忍辱、
 ④お線香を供える…精進、⑤ごはん等を供える…禅定、⑥ロウソクを供える…智慧

 私たちの毎日のお給仕の中にも六波羅蜜が象徴的に示されていることがわかります。(棟髙)

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