平成29年・バックナンバー

平成29年05月
色即是空 空即是色 (5)

学びの森



安心(あんじん)を得てこそ、正しい対応や行動もできる
 トランプ大統領の掲げる「アメリカ第一主義」は、「今」の世界情勢を象徴する1つの現象なのではないか、と見られています。つい最近まで世界のスウ勢は「グローバル化」として捉えられてきました。国境という枠がなくなり(ボーダレス)、世界は徐々に均一化の方向に進んでいくだろうと。でも、最近の様子は、それとは正反対の方向に向かいつつあるように見えてきているのです。

 世界情勢をはじめ、すべてのものは「いつ、どのように変化していくか」予想もできない。仏教がいう「諸行無常」そのものです。

 仏教者は、その目指すところを「安心(あんじん)」と捉え、真の安らぎとは何かを探ってきました。そして「覚ったお方」であるみ仏の示されたものの見方、考え方に従って、「すべての物事は常に変化し続けるものだ(諸行無常)」。なぜなら「すべての物事には、永遠不変の本質がない(諸法無我)」のだから「このようにありつづけるはず」とか「あれは絶対こうなのだから」などといった思い込み(決めつけ)を決して持たないようにせよ。そして、時々刻々に生滅変化する状況を真正面から見据えて右往左往することのない自分になれ、と教えてくれています。そうなれた時に、真の安らぎ(安心・あんじん)が得られるのだ(涅槃寂静)と。

 仏教の開祖「釈尊」の晩年にこんなことがありました。
隣国の王子が父王の留守中にクーデターをおこし王位につきました。その新王は、釈尊の出身部族である釈迦族に深いうらみを持っていたため、かねてからの計画通り釈迦族の王都カピラヴァストゥを攻撃しようとしました。その攻撃を察知された釈尊は、この軍隊が通る道沿いの1本の枯木の下に坐られました。この釈尊の姿を見つけた新王は馬車から降り、「なぜ、そんなところに坐っておられるのですか」と問いかけたところ、釈尊は「大王よ、親戚の蔭は涼しい」と応えられたといいます。そこで釈尊の意中を察した新王は、一旦軍隊を引き返しました。しかし、その計画を断念できず、こんなやりとりが三度続いたのです。しかし、四度目の攻撃の時、釈尊は、新王の心を変えることは不可能であることを確信され、枯木の下に坐られることはありませんでした。その結果、釈迦族の人々は戦うことなく亡びたと伝えられています。一族の滅亡を目の当たりにされた時の釈尊のお心は、いかなるものだったのでしょうか。ただわたしたちに分かることは、滅亡を真正面から受け止めた釈迦族の人々に「安心(あんじん)の姿」があったということだけです。

 そうした「安心(あんじん)」を得た時にこそ、いかなる状況の変化が起ったとしても、冷静に対応できる準備は整っていたのだ、ということを。

 わたしたちも安心(あんじん)を得られた時、「色即是空、空即是色」を体解、体得したことになるのです。すべての物事(色)に永遠不変の本質がない(空)ことを確信し、それを体解体得したならば、状況の変化は常に正しく真正面から見続けることが出来、それが「最悪」の方向へと進むことのないよう、常に正しく行動できるよう、正しい智慧を常に磨いておくことが出来るようになるに違いありません。(乘慶)



学びの森・バックナンバーはこちら

サイトマップ ページトップへ

Copyright 中山身語正宗 All Rights Reserved.