平成27年・バックナンバー

平成27年12月
宗教学から見た中山身語正宗[10]


脳科学から見た仏教 学びの森

脳科学の面からも裏付けられる成仏への道
宗教学は、さまざまな学問領域と関連して研究が進められます。その中には、現代の科学・医学・生理学などの分野と関連した研究もあります。今回はその一例として、脳科学との関連をご紹介します(以下、井上ウィマラ他編『仏教心理学キーワード事典』春秋社、より有田秀穂「貪瞋痴の脳生理学」。高田明和『念ずれば夢かなう』春秋社、参照)。

脳科学では、ドーパミン神経、ノルアドレナリン神経、セロトニン神経が相互に関連しあって、人のあらゆる情動を形成していることが知られています。私たちの心に煩悩が沸き起こっている時、脳の中では何が起きているのでしょうか。
ドーパミン神経は、業績を上げたい、競争に勝ちたいなど、何らかの報酬(快)を求めて意欲を起こす時に活性化されます。この神経が暴走すると「貪(とん)」(欲の上に欲を重ねる貪(むさぼ)りの心)になります。ノルアドレナリン神経は、何らかの不快なストレスが負荷される時に興奮します。この神経が暴走すると「瞋(じん)」(激しい怒り)になります。一方、セロトニン神経は自律神経を整え、ドーパミン神経やノルアドレナリン神経の暴走を食い止め、平常心をもたらす作用をします。したがってセロトニン神経を活発にすれば、「貪」や「瞋」のもとである「痴(ち)」(愚痴・あらゆる煩悩のもとである無明(むみょう))を克服しやすくなると考えられるのです。

最近の研究で、坐禅・歩行瞑想(お百度・巡礼)・ヨーガなどの呼吸や歩行のリズム運動、あるいは読経・念仏などの単純なリズム運動を集中して持続的に行うと、セロトニン神経が活性化することがわかってきました。仏教では、このような行を日常的に実践しますので、脳科学の観点から見ても、煩悩を減らしていくしくみになっているといえるでしょう。
ある研究者が、修行僧の瞑想中の脳波を調べてみました。そうするとα(アルファ)波(リラックスしている時に出る波)ではなく、γ(ガンマ)波が出ていることがわかりました。γ波は覚醒(通常)時のβ(ベータ)波よりも速い波で、脳全体が普通以上に激しく活動しながらも、同時に完全に休息している時に出る脳波だと言われています。これこそが「無念無想(無我)の境地」と言われる状態なのですが、それは決して何もないというような状態ではなく、むしろ五感が研ぎ澄まされ、脳本来の活動が邪魔されない状態なのです。この実験から、正しい瞑想を続けていくと思考作用が静まり、心の平安が得やすくなることが判明しました。

また、私たちの脳には、相手の言動をまねようとはたらく「ミラー細胞」があることが知られています。尊敬すべき先生の言動は、生徒を感化します。生徒はやがて先生の言動をまねるようになり、先生に近づいていき、先生に似ていきます。じつは、これと同じことが読経などを通じても起こるのです。み仏は最も頼れる先生であり、み仏の言葉であるお経を見聞きすることによって、私たちの脳にあるミラー細胞が刺激され、私たちは次第にお経の意味する言葉に感化され、み仏に近づいていけるようになるのです。
このように、瞑想や読経などの修行を重ねていくことによって成仏への道が開けていくことが、現代の脳科学の面からも裏付けられているのは興味深いことです。

『こすもす』397号(平成26年1月5日発行)「神仏の輝き」より


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