平成27年・バックナンバー

平成27年8月
宗教学から見た中山身語正宗[6]


断食の効力 学びの森

多様な宗教に見られる「断食行」に共通するのは自制・感謝・祈り
本宗のお行の一つに感謝運動という断食行があります。
飽食の現代、日本では世界中の料理がいつでも身近に食べられるようになりました。食は人生の大きな楽しみの一つといっても過言ではありません。最近はグルメ情報も増え、限界まで食べることを面白がるようなテレビ番組もみられます。このような現代の風潮からすれば、断食はつらいものであり、それなりの覚悟も必要になります。
そのためでしょうか、今の日本人は過食傾向にあり、運動不足も重なって体調を崩し、半病人のようになってしまっている人も多いようです。このことから、食生活の乱れが病の原因だと考える医者も多く、「断食・少食を正しく実行すれば、たいていの病は治り、健康・長寿や美容・若返りにも効果がある」と説く断食セラピーも行われています。

断食中は消化器官が休まるので交感神経の働きが弱まり、リラックス効果をもたらす副交感神経が優位になります。さらに断食によるデトックス(解毒)効果で栄養吸収の効率も上がり、酸性体質からアルカリ性体質へと体質が改善されるようです。断食道場などでは1週間の断食が勧められますが、美容を目的に週末断食などのプチ断食を行う人も増えてきました。しかし、本格的な断食には注意を要します。体に負担をかけないように、前後におかゆや重湯を挟むなど、段階的に食事を調整する工夫も大切でしょう。

さて、そもそも行としての断食にはどんな意味があるのでしょうか。断食の意味や起源は、宗教によってさまざまです。古来インドでは、断食は苦行の一つであり、魂を閉じ込めている肉体を痛めつけることで相対的に魂を解放させるという意味を持ちます。ユダヤ教では、神への贖罪(しょくざい)・懺悔という心の内省として断食が行われます。イスラーム教では、断食は信者同士の団結力を高める儀式として行われます。イスラーム暦9月・ラマダーン月の1カ月間は、日の出から日の入りまでが斎戒(さいかい)の時間とされ、一切の飲食や快楽が禁じられます。禁酒・禁煙はもちろん、栄養注射や性行為も禁止です。しかし日没後は普段より豪華な夕食が待っているなど、楽しいお祭りの期間でもあります。一方、日本では、家族の死など喪に服する間に断食をする風習があり、また祈願祭などの前に準備(お浄め)として断食をする例があります。苦行の中でなされる祈りには功徳があり、必ず聞き届けられるとされるのです。

このように断食の意味は多様ですが、断食によって身と心を浄め、忍耐力を養い、欲望を制御すること(自制)、日々の飲食の恵みに心を向けること(感謝)、飢餓に苦しむ人に思いを馳せつつ世界平和・万民豊楽(ばんみんぶらく)を願うこと(祈り)などは共通に見られます。
本宗でも、断食行の目的の一つは「気ままをおさめること」です。毎週一食を断つことによって、お米や野菜・果物・肉魚など、多くの生命(いのち)によって自分が生かされていることに思いを巡らせます。一食をいただけることへの感謝の念が深まると、気ままに食べたいだけ食べていた自分の姿が見えてきます。日々の食事を見直し、その内容を日記風に記録してみるのもよいかもしれません。いかに不必要に食べていたか、いたらない自分に気づかされ、精進努力の気持ちが芽生えることでしょう。次回は、感謝運動の第二の目的でもある「布施行」について考えてみましょう。

『こすもす』392号(平成25年8月5日発行)「神仏の輝き」より


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